新垣結衣のドラマ「獣になれない私たち 」は面白いのか?

 ガッキ―は、可愛い。とんでもなく可愛い。

 しかし、今回のドラマでは、雲に覆われた空のようで、なかなか笑ってくれない。
 それは、パワハラに耐えて耐えて、やっとよくなるかと思っても逆戻りしてしまう展開だからです。
 それでも、時折見せる笑顔やしぐさに、やっぱり可愛いと癒されるのです。

キャスト

    キャスト

  • 新垣結衣(役:深海晶)ヒロイン。「いつでも笑顔」「仕事は完璧」「みんなに愛される女」。その見た目と裏腹に自分を殺し周りに自分を合せることに苦痛を感じている。言いたいことを言えず、笑顔の仮面をかぶり続けどんどん擦り減っていく。
  • 松田龍平(役:根本恒星)会計事務所を構える会計士。現実を醒めた目で観察し毒を吐く。
  • 田中圭(役:花井京谷)晶の恋人。優しい男。元カノがマンションに居座っているが追い出すことができずにいる。晶も知っていて、二人の愛の大きな障害となっている。
  • 黒木華(役:長門朱里)京介の元カノ。コミュニケーションが苦手、感情を表にだすことが平気で手に負えない。
  • 菊地凛子(役:橘呉羽)恒星と付き合っていたが、突然別の男性との結婚する。自由奔放、本音を語る。
  • 松尾貴史(役:タクラマカン斎藤)クラフトビール店「5tap」のオーナー兼店長
  • 山内圭哉(役:九十九剣児)ECサイト制作会社社長。頭の回転が速く、指示を甲高い大声でマシンガンのように繰り出す。休みでもお構いなしに何件もメールを送り付ける。怒りっぽく、ほぼパワハラ。社内に社員監視カメラを設置する。
  • 犬飼貴丈(役 上野発)気弱な新人営業。
  • 伊藤沙莉(役 松任谷夢子)仕事を晶に押し付ける営業。
  • 近藤公園(役 佐久間久作)SEチームリーダー。晶のお願いを聞き入れてくれる頼れる人。社長に嫌気がさし退社を検討している。
  • 田中美佐子(役 花井千春)京介の母。自宅で夫の介護をしている。
  • 飯尾和樹(役 橘カイジ)橘呉羽の夫

どんな話か

 ECサイト制作会社に勤める深海晶は、自分の言いたいことも言えない、タイトルのように獣になれないOLだ。
 バイトとして入社したのに、いつの間にか正社員の営業の面倒を見たり、顧客に行ってプレゼンやらされたりとワンマン社長にいいようにこき使われている。
 やっとの思いで改善を訴えると、特別チーフクリエイター部長とか、ヘンテコな肩書をつけられ、結局待遇は変わらない。
 部下は無気力であったり、に仕事を押し付けたりする。
 社長のパワハラと協力しない部下たちの間で晶は擦り減っていく。

 恋人の京介は、元カノ朱里を自分のマンションに住まわせている。彼女が無職で行く当てもないため、追い出すことができないでいる。
 何とか現状を変えたいが何もできない、ただ擦り減っていくだけの毎日だ。

 近所のクラフトビール専門店で知り合った会計士の恒星は、毎年、不正会計に手を貸す羽目に陥っている。抜け出したいが抜け出せない。
 恒星、そして恒星の元カノ呉羽が交流することで、この状況が変わり始めていく。

見どころは

晶はこの迷宮から抜け出せるのか?

 はいろんなことをことを考え実行に移すが、結局上手くいかない。
 まだ我慢するの、これでもかこれでもかと迫る理不尽の嵐。
 新しく入社した新人が社長に潰され我慢は限界に達する。
 それでもそれでもは我慢するのでしょうか?

 自分さえ我慢したら上手くいくという身に染みついた思考。
 は何を選択し何を捨てるのか。
 まだ、晶の背中を押す何かが必要になるかもしれません。

恒星は職を失ってでも悪の連鎖から抜け出すのか?

 無職になる恐怖は計り知れません。
 不正に関与したなら、なおさらです。
 人に支配される人生か、自分の人生を取り戻すのか。
 恒星の決断も見逃せません。

晶と京介、恒星の関係はどうなっていくのか?

 が知ったうえだとしても、4年も元カノをマンションに住まわせていた京介
 どうしようもない理由があったとしても、許されるものなのでしょうか?
 京介を許し、彼との関係を続けるのでしょうか。

なぜ呉羽の頭の中で鐘の音は鳴ったのか?

 恒星と付き合っていた呉羽はなぜ、橘カイジと結婚したのか?
 契約上のトラブルによる偽装結婚との情報が流れます。
 しかし、呉羽はそのとき頭の中で、荘厳な鐘の音が鳴り響いたと言います。
 それは、橘カイジのあるセリフがきっかけだったようです。
 それが本当なら知りたいですね。(そして使ってみたいと思います。へへっ)
 ご自分で観て確かめて下さい。

獣になれない私達は何を選択したのでしょうか?

 ラストでと鐘の音を聞きに行ったのは誰なのでしょうか?
 その時、鐘は二人の頭の中に鳴り響いたのでしょうか?

ドラマで流れる挿入歌、ビッケブランカ の『まっしろ』も話を盛りあげます。

 この曲は、ただもがく姿さえ抒情詩に変えます。
 打ちひしがれたときに、登場人物を優しく包み、ほのかな希望を感じさせます。
 新しい道を歩みはじめたときも、明るい未来を示唆するようです。
 ドラマの世界観そのものかもしれません。

新垣結衣の演技はどうだった?

 話の内容から、ただ可愛いガッキ―を期待して観た人にとっては物足りないかもしれません。
 でも、新垣さんでなければ、この話はもっと暗いものになったかもしれません。
 それは、可愛いだけではなく、弱い存在であっても、決して希望を失わなず、運命にひざまずかない、芯をもつ女性を表現できていたからだと思います。
 今回の役を演じたことは、周りの評価はともかく彼女の女優人生にプラスだったと思います。
 

共演者はどうだった?

W主役の松田龍平さんはどうだったのでしょうか?

 醒めた目で他人を酷評しながら、自らは犯罪の片棒を担いでいる。
 最初はシニカルで嫌な奴だったが、自分の中で暴れるコンプレックスに躍らされ、失って初めて大切な人だったと知り呆然とする。
 そんな屈折した人物を演じるのは難しかったと思いますが、上手く表現していたと思います。
 犯罪を強要する相手をやっつけて、笑いながら逃げるシーンは必見でしょう。

 父、松田優作とは全く違うジャンルの俳優さんだったのですね。どうしても比較してしまいますが、今後はやめようと思います。

呉羽を演じた菊地凛子さんも良かったと思います。

恒星が陥ったおかしな均衡状態をガラガラポンする役割をもち、とても個性的な性格を持っています。
自分の気持ちに忠実で、ストレートにそれを周りにぶつける。
演じ方を間違えると滑稽になる危険がありましたが、役の個性に負けない演技だったと思います。

京介の母を演じた田中美佐子さんも良かったと思います。

 繰り返しラインをに送り、が擦り減る要因の一つでしたが、息子、京介が元カノ朱里を自分のマンションに住まわせていたことを知り、息子の情けなさを嘆き、に済まないと思う気持ちが手に取るようにわかりました。

結局この話は面白いのか?

 テーマが人の生き方を扱ったもので、それも、厳しい選択を迫るものなので、楽しい作品ではないかもしれません。それでも、仄かな希望を感じ取ることができます。

 物語の進行が遅いという指摘もありましたが、私はそうは思いません。
 この状況から抜け出すことは簡単ではありません。何度トライしてもはね返される展開がなくては、最後の決断がハッピーエンドでないため、あの反抗がささやかな一歩でしかないため、活きなかったと思うのです。

 日々の生活で大きな壁にぶち当たっている人は必見です。

 それ以外でも、見逃したかたは、観て損はないと思います。